2月のお手入れのポイント

 

1.    剪定     :ねらい定めて思い切りよく

2.    施肥     :追肥や置肥えは剪定直後から

3.    害虫駆除   :カイガラムシとハダニ退治

4.    その他    :まだ間に合う植え替えや鉢植え

 

1.剪定

  HTF(四季咲き大輪種と四季咲き房咲き種)の剪定

関東以西では、1月から2月にかけてぼつぼつ小枝を整理し、すっきりした樹形になったバラは、2月中旬を過ぎる頃から日増しに芽がふくらんできます。枝先の芽が先に伸び出し徐々に下の芽も伸び出します。剪定しようと思う部位の芽が艶を帯び、表皮を突き破って今まさに伸び出そうとする時が、剪定のタイミングです。2月下旬~3月上旬が適期ですが、暖冬の今年はもう少し早くなるでしょう。遅過ぎて芽が伸び出している時より、まだ伸び出していない時のほうがよいので、なるべく2月中に剪定してください。実際は1月中に剪定しても適期の剪定と大差ありませんから、海外出張などで長期間留守の時などは、早めに切ってください。

 なぜ剪定するのでしょうか。これは素朴で基本的な疑問です。バラを剪定しないで自然の樹形のままにすると、先端の高い部分から花枝が伸び出し、花は咲きますが細い枝に貧弱な花ばかりになります。自生の野バラなどは、まったく手を加えませんから、上に伸びた枝はやがて重さに耐えかねて、曲がったり風で折れたりして樹形を保ち、古い枝は自然に枯れ込んで新梢と交替します。剪定作業はこれらのことを察知しバラの手助けをして、なるべくバラを良好な状態にしてやることなのです。本当の意味で剪定と言えるのは、この時期の冬の剪定です。この時期バラはすべての葉を落とし、ゆっくり白根を伸ばしながら春の開花に向けて準備中です。貴重な栄養分を無駄使いさせないために、勢力の強い枝を選んで上部を思いきって切除し、伸び出した花枝に栄養分が十分供給されるよう手助けしてやります。初めの頃は思いきり切ることがなかなかできないのですが、この時は鬼になったつもりでハサミを入れてください。初心者の方は、できれば各地域のバラ会や、ベテランの方を頼って実地に体験するのが近道です。日頃の疑問点も氷解すること受け合いです。

 前置きが長くなりました。紙面で説明するのは難しいことですが、つとめて分かり易く述べるつもりです。

 バラは枝の更新が早い植物です。昨年伸びたシュート(主幹枝と言い最も良い花が咲く枝)には十分栄養が送られますが、古い枝は衰弱してきます。従って昨年伸び出した新しいシュートが剪定の対象になります。ただし、沢山花を咲かせるためには、新しいシュートだけに頼らず、古いシュートから出た枝や昨年花が咲いた枝も残してください。

 2月下旬には、剪定する枝だけに整理されているのが理想ですが、細い枝や内側の込み合う枝がまだ残っていたら切り落とし、春花を咲かせようと思う枝だけにします。次はその枝をどこで切るかです。根際から出たシュートなら勢力が強いので、2段目の上部から下部。途中から出たシュートや枝は、やや弱いので1段目の中程から上部で切ります。いずれもまだ伸び出していないふっくらとした良芽を選んで、芽の方向に合わせて5ミリぐらい上を斜めに切ります。芽の上5ミリで切るのは、それ以上だと水が揚がらず枯れる原因になるからです。伸び出している芽を避ける理由は、バラの芽は伸び出す前に葉は造られていますが、花はまだ造られていません。品種や温度により異なりますが、芽が伸び出して14センチほどになった時、花芽分化が始まり、がく片、花弁、雄ずい、雌ずいの順に分化します。この花芽分化は非常にデリケートで、日照不足や低温に合うと発育停止を起こし、がく片や花弁細胞は崩壊して壊死します。その結果芽が伸びても花が咲かないブラインドの枝になってしまいます。ただし、雄ずい、雌ずいの形成後は寒さや日照不足に合っても、ほとんど発育停止はしません。まだ寒い時期に伸びている芽は、低温の影響で花芽分化を停止する確率が高いので、伸びている芽はカットして、これから伸びだそうとしている芽の上で剪定する訳です。また、

上部の芽は活性が弱く、あまり良い枝にはなりません。もっともHTのシュートは上部の芽はピンチ(枝が軟らかいうちに指で上部を折ること)して伸ばすので弱い芽はないのですが、つるバラなどの先端を切除するのはそのためです。下部の芽は発芽が強く抑制されていて萌芽が遅く、中間位置の芽は抑制も強いが萌芽後の枝は活性が強く、剪定後ふっくらと膨張し、勢いよく伸び出します。たくましい枝に良花が咲きやすいので、この位置で切るのが良い訳です。内向きの芽より外側を向いた芽のほうが、芽が伸びた後込み合わないのでよいのですが、HTの場合は枝数が少ないのと、予定の花枝がうまく育たないこともあるので、芽の向きにはあまりこだわらずに剪定してください。Fは花数を多くしたいので、HTより枝数を多くし、やや浅目(あまり切り詰めない)に剪定します。内側の込み合う枝はやはり切り取り風通しをよくします。

  Min(ミニチュア)の剪定

  ミニチュアの剪定は、枝数も多く細枝で芽も小さいので、こまかいことはあまり気にせず、内側の込み合う枝や弱小枝を切り取り、樹形を整えながら全体の1/31/4ぐらいに切り詰めます。ミニバラは思いきって切り詰めたほうが、花枝が伸び伸び育ち、シュートの発生も多くなります。

  つるバラの誘引と剪定

つるバラは、12月~1月中に誘引と剪定を実施してあるのが標準です。誘引とは、スクリーンやベッド、ポールなどにつるを誘導して、なるべく枝を横にしたり曲げたりすることですが、つるバラは枝を横に倒したり曲げたりすると、先端部分に集中していた生長ホルモンが、各芽に分散して多くの花芽を伸ばしますから、誘引は欠かせません。2月~3月になると枝が硬く折れ易くなったり、芽が伸び出していて扱いにくくなります。3月の時点で実施していない場合は、なるべく早くこの作業を行ってください。新しいシュートが沢山出ていたら、昨年花が咲いた古い枝は切り捨てて、新しいシュートを誘引します。ただし、古い枝の途中から出たシュートも残しますから注意してください。また、新しいシュートが少ない時は、昨年咲いた花枝も残し、2芽ぐらいのところで剪定してください。シュートの先端も活性が弱いので20センチ~30センチほど切っておきます。

  オールド・ローズ

   オールド・ローズは栽培歴も長く、品種や系統も多いので一概には言えませんが、大まかに言えば、ガリカ系はそれほど樹高が伸びないので、全体の2/3程度に切り詰めます。ハイブリッド・ティーやフロリバンダのように、新しい枝だけでなく、昨春花が咲いた枝も残して切るほうがにぎやかに咲きます。センチフォリア系やダマスク系は樹高が高いものが多いので、全体の1/2程度に切ります。アルバ系は高いところに花が咲き易いので、枝先を軽く切除する程度にとどめます。くり返し咲き性のあるブルボン系やハイブリッド・パーぺチュアル系、チャイナ系やポリアンサ系などは、フロリバンダのような感覚で剪定します。

 オールド・ローズはHTのように良芽を選んで切る必要はありません。どこからでも花枝が延び出し易いので、全体の樹形を整えることを主眼にして、ハサミを入れてください。

 

2.施肥

 露地植えの元肥えは2月いっぱいが限度です。まだ与えていない場合は、有機質肥料を1株当たり700g~1㎏ほど(具体的な例としては炭酸苦土石灰200g『カルシウム50%マグネシウム25%』油かす500g『チッソ5%リンサン2%カリウム1.3%』バットグアノ300g『リンサン30%』硫酸カリ100g『カリウム50%』)株から2030センチの根周りに撒き、表土と混ぜ合わせます。できれば腐葉土や堆肥、牛糞などを510リットルほど一緒にすき込んでください。

 冬の元肥えが施してあれば、原則として追肥は不要です。元肥えが不十分だったり、与えていなかった方は、剪定直後から化成肥料を追肥します。バラは発芽直後から葉が標準の半分ほどの大きさになり、光合成によって栄養成分を造れるようになるまでは、根元付近に貯蔵している養分で育つので、あまり早く追肥してもほとんど吸収されません。剪定直後からで十分だと思います。HTFの成木1本当たり、高度化成肥料なら軽く一握り(約20g)、半月に一度ぐらい、開花するまでに56回根周りに撒きます。肥料を撒いた後たっぷり潅水すると早く効きます。

 つるバラは大きさによって違いますが、HTF25倍を施します。ただしあまり大きくしたくない場合は、少なくしてください。

 鉢植えも露地植え同様剪定直後から、鉢の大きさに応じて、鉢土の表面に発酵済みの有機質肥料(玉肥え、市販のもので肥料成分もこだわらなくてよい)を置肥えします。置肥えの量は鉢土の量に比例させて、6号鉢なら10g8号鉢なら2025g10号鉢なら4050g程度になります。これを月1回のペースで続けます。これだけで肥料は十分だと思いますが、不足気味だと感じたら、化成肥料なら肥料成分が多いので、例えばチッソ、リンサン、カリがそれぞれ8%のものなら、有機質肥料の1/2の量を、溶けるのが早いので毎月2回ほど表土にパラパラと撒きます。尚、液肥を使用する場合は、例えばチッソ・リンサン・カリ・5%の原液を1000倍に薄めて・・・と説明している場合が多いようですが、これでは薄すぎて効果があがりません。300500倍ぐらいで使ってください。私は夏場でも200倍で水やり代わりに使うことがありますが、これくらいの濃度が最もよく育ちます。10日に一度ぐらい水やり代わりに与えてもよいでしょう。

 尚、玉肥えはマグネシウムがほとんど含まれていないので、できればマグネシウム肥料を単体で求めて、玉肥えと一緒に置肥えすると良いでしょう。多少高価ですが、マグネシウムや微量要素入りの肥料も市販されています。マグネシウムは光合成に欠かせない大切な成分です。

 

3.害虫駆除

 カイガラムシとハダニ退治の最後のチャンスです。新芽が伸び出すと薬害が出易いので、なるべく早く散布してください。薬害が出ても枯れることはありませんが、ちょっと見苦しくなります。

 カイガラムシとハダニの特効薬で、農薬取締法で認められているのは、スプレイ式のマシン油だけです。尚、従来使用されていた石灰硫黄合剤は違法ですから使わないでください。

 

4.その他

 大苗の露地植えや、鉢植えの植え替えや植え付けは、2月いっぱいが限度と心得てください。剪定を終えると花芽がいっせいに伸び出し、肥料を吸収する白根もかなり増えています。花芽形成の大切な時期は、なるべくそっとしてやりたいものです。もっとも、細かいことを無視すれば3月でも移植は可能です。また、鉢物を地におろすのは、根をあまり崩さなければいつでもOKです。

 

文責・成田光雄