4月のお手入れ

 


1.     1.  芽かき(芽の整理):最終芽かきは蕾を確認して

2.      2. 施肥:原則的には不要、不足ぎみなら若干追肥

3.      3. 風よけ:春一番は台風なみ

4.       4.病害虫防除:濃度は葉の生長に合わせて

5.       5.潅水:最も水を欲しがるが、雨量も多い

6.       6.新苗の植え付け:4月が適期、なるべく早く

7.       7.その他:鉢植えに薄い液肥

 

1.芽かき

 3月末までに、出開きの芽やブラインドの芽を、ぼつぼつ整理して4月にはいりますが、最終的な芽かきは、蕾を確認してから実施することが大切です。1015cm程に育ったステムで、先端がふっくらと充実していれば、たいてい蕾を内蔵していますが、なかなか見分け難いものです。ステムは充実しているように見えても、蕾が付かず、がっかりさせられることがしばしばあるので、確実に蕾を見てから制限するようにしてください。

 4月初旬は、まだ寒波襲来の不安があり、ひどい時は内蔵した蕾が全滅することもあり、油断できないので、慌てて芽の整理をせず、将来交差し傷つけ合いそうなステム(新梢)や、1ヶ所から34本出たもの、下部の貧弱な芽などを取り除いて、じっくり様子を見ていてください。やがてステムが1520cmほどになり、先端を指で触ってみると、ごろごろした感触で蕾のあることが分かります。当地では、その時期は例年15日前後になりますが、それでも遅いステムは、まだ10cm程度で蕾の確認はできません。しかし、生長の遅れているステムの方が案外素直な良花を咲かせるので、もう少し待ち、20日を過ぎて蕾を目で見てから最終の制限をします。20日前後でもまだ蕾の確認ができないものもありますが、この頃なら、ステムの先がふくらんでいれば、蕾の存在は間違いないので、蕾が見えなくとも、充実した良いステムを選んでください。

 次に述べることは、秀花を咲かせるためのテクニックなので、興味のない方は飛ばしてください。生長の早いトップの芽(頂芽)は、蕾もかなり大きくなっていますが、ほとんど良花は期待できないので、予定本数が十分な時は、5枚葉23枚つけてピンチします。もっとも充実したステムを折ることは、最初は勇気のいることですが、惜しまずにピンチすると、養分の流れが第23のステムに移り、好結果を得られます。頂芽は真先に伸び出し、ステムが16cmぐらいの花芽分化の時期に寒害を受けやすく、養分も集中しがちで、すっきりした花は咲き難いので、ピンチを実施していない方は試みてください。頂芽をピンチすると、それより下部の12本のステムがバランスよく育ち、頂芽をそのまま咲かせた時と比べ格段に良くなります。頂芽をピンチした後そこから伸び出すステムには、6月に入って花が咲くことになり、また充実した枝葉は大切な同化作用を担い、切花によるショックを和らげるので、次芽まで切り戻さない方がよいと思います。ただし、節で剪定してあると、他の芽よりやや遅れて数本伸び出してくるので、良いステムだけ残し他の芽は欠き取っておくと、素直なステムになり、良花が咲きやすくなるのでそのまま育てます。

 最終的な芽の整理といっても、この時点ではまだ風害や虫害で花にならないものもでるので、各枝とも予定の本数より12本多く残しておきます。被害を受けた枝は、元から切り取るのではなく、樹のためにピンチして葉を残してやりましょう。茎蜂襲来のおそれがなくなったら、樹のバランスを見て、花数が多過ぎると思ったら間引く枝を決めます。せっかく育った枝なので惜しくなるものですが、ここで花数を減らすことが花を大きくするコツなので、ぜひ実行してください。もちろんこのような制限は、コンテストに出したり秀花にこだわるのでなければ、必要ないことです。

 こうして見ると、相当のステムを無駄にするようですが、実際は、放っておいても水準以上に伸びる花枝は、多過ぎるほどにはならないもので、それぞれの樹齢や力に応じた花を咲かせます。健全な花枝に養分を集中させるため、ちょっと手助けするだけでよいのです。難しく考えることはなく、やや遅れぎみにブラインドや出開きの不要芽、貧弱なステムや互いに傷つけ合うステムなどを取り除いてやれば、自然に必要な花枝が残るものです。

 

2.施肥

 3月と同様、今月も原則として追肥は不要です。ただし、元肥を入れない追肥主義の方や、元肥が不十分だったり、砂地などで肥持ちの悪い土地では、元肥だけでは不足ぎみになるので、先月同様追肥してください。特に追肥主義の方は千代田化成のような速効性のものを1株当たり10gほどを1週間~10日の間隔で与えてください。また、元肥が不足ぎみの方は月に2回ほど与えます。たっぷり元肥が入っている肥持ちのよい土地では、バラの伸長に合わせて、気温の上昇とともに肥料分は盛んに分解されて、バラの根に補給し続けているはずです。過食で太らせるよりは、バランスのよい栄養で質的に良好な生育をさせた方がよく、見かけだけの太いステムには決して秀花は咲きません。化学肥料の追肥は、どうしても一時的に効き過ぎ、斑があるので、施す場合は少量ずつ与え、努めてなだらかな肥効に調整しますが、徐々に肥効を現す有機質肥料の元肥が最もよいようです。リン酸がよく効く肥料があるからと聞き、大量に与えたりすると肥料バランスがくずれて、下葉の葉縁からネクロシス(葉縁から枯れ込む)を起こして落葉したり、鉄、亜鉛、銅などの微量要素の欠乏を助長し、クロロシス(葉縁や葉脈が黄白化する)を生じたりします。思いつきで肥料を与えないことが無難です。

 

3.風よけ

 ‘春は風と共に来たりぬ’で、この春一番の強風は、台風そこのけの被害を与えるものです。始末の悪いことに春風は、波状的に二波、三波と吹きまくり、せっかく伸び出したステムを傷めつけます。私の庭は猛烈に風当りの強い所で、フレームを設備しないと、満足な枝葉の状態で花を見ることはできません。寒冷紗で囲い、天井にも張ることによって防いでいます。風当りの少ない場所ならば、それほど苦労はないと思いますが、それぞれの環境に合った方法で、風害を防いでください。葉が折れたり傷ついたりしては、観賞価値が低下するし、無傷の時でも風当りが強いと、バラは倒れまいとして茎も葉も小さくずんぐりとまとまってしまいます。かといってガラス室に入れて無風にすると、花屋のバラのようになり、これも困りものです。寒冷紗が愛用されるのは、適当に風を和らげ、茎や葉をバランスよく育てると同時に、葉が固まる頃の日照からの保護が大きな要因です。 

 

4.病害虫防除

 バラの栽培は、薬剤散布なしでは無病で育てることは不可能です。特にハダニとクロホシ病は放置すると枯死につながります。無農薬で育つバラがあれば、日本中にバラがあふれるだろう、そんな丈夫なバラができないものかと常に思っています。

 いずれにしても農薬散布はなるべく少なくしたいので、ぎりぎりまで我慢して4月中旬頃から始めます。害虫で真先に現れるのはアブラムシです。この虫はオルトランで簡単に駆除できます。ハダニはまだ活動していないと思いますが、暖かい日だまりなどでは、そろそろ現れることもあります。何となく葉色が薄く葉裏が汚れていたら、ハダニを疑ってください。ルーペでのぞくと、せわしなく動き回るハダニを確認できます。殺ダニ剤には、ダニを殺す作用が異なるものが何種類かあり、それを交互に使うことによって効果を挙げることができます。

次にバラに適用登録のある殺ダニ剤と作用機構を列挙してみます。

 

コロマイト水和剤→クロラドチャネル活性化(神経系のかく乱)

 テルスター水和剤→神経伝達機能の阻害

 ダニカット乳剤→神経伝達の増加

 オサダン水和剤→エネルギー生成系の酸化的リン酸化阻害

 カスケード乳剤→脱皮阻害

 ダニトロンフロアブル→ミトコンドリア電子伝達系阻害 

 ロディ乳剤→神経伝達機能の阻害

 

 これらの殺ダニ剤のうち、殺卵、殺幼虫、殺成虫のいずれにも効くのは、コロマイト、ダニカットの2種類のみです。作用機作も異なるので、基本的にこの2薬で交互に使用するのがベターです。他にオサダンは殺卵に効果がなく、ダニトロンは殺卵性がやや劣りますが、作用機構が異なるので追加しておくとよいでしょう。

薬剤の濃度については、春先の新芽の頃は薬害が出ることがあるので、用心

のため規定濃度より薄くしますが、面倒な方は規定通りでもそれほど薬害はひどくありません。その際、例えば薬品のラベルに希釈倍率10002000倍となっていたら、薄い2000倍に合わせてください。10002000倍とは2000倍でも十分効果があることを表しているのです。

薬剤は同じ系統のものを使い続けると効き目が弱くなるので、異系統の薬剤を交互に使うようにします。オルトランとアドマイヤーがその例です。オルトランは有機リン系、アドマイヤーはネオニコチノイド系です。

栽培本数が少ない方は、効果は不十分ですが薬剤調合のわずらわしさがない、スプレー缶タイプが手軽に使えて便利です。市販の商品がたくさんあり、選ぶのに迷うほどですが、効能が書いてあるので、バラまたは花卉植物に適用があるもので、殺虫効果のほかクロホシ病やウドンコ病に効果があることを確かめて求めてください。

〈薬剤調合例:水1リットル当たり〉

  4月初旬

A オルトラン水和剤     0.7g1400倍)  (殺虫)

  又は、カルホス乳剤   0.5g2000倍)   ( ) 

  ダコニールフロアブル  0.7g1400倍)(ウドンコ病・クロホシ病)

  展着剤         0.2g5000倍)  

 

B  アドマイヤーフロアブル 0.33g3000倍)  (殺虫)

   ダコニールフロアブル   0.7g1400倍)(ウドンコ病・クロホシ病)

   展着剤         0.2g5000倍)

  ウドンコ病が発生したら

C  オルトラン水和剤     0.7g1400倍) (殺虫)

   ルビゲン水和剤      0.25g4000倍)(ウドンコ病治療)

   又はサルバトーレME液  0.33g3000倍)(   〃   )

   展着剤          0.2g5000倍)

  クロホシ病が発生したら

D  オルトラン水和剤     0.7g1400倍)  (殺虫)  

   サプロール乳剤     0.7g1400倍)(クロホシ病治療)

   又はラリー乳剤     0.2g5000倍)(   〃   )

   又はマネージ水和剤   0.7g1400倍)(   〃   

  ウドンコ病とクロホシ病が同時に発生した時は、Cにサプロールかラリーを追加、Dにサルバトーレかルビゲンを追加します。

 

  4月下旬(通常の希釈倍率にする)

E   オルトラン水和剤     1g1000倍)   (殺虫)

ダコニールフロアブル   1g1000倍)(ウドンコ病・クロホシ病)

   展着剤          0.21g5000倍)

F  アドマイヤーフロアブル   0.5g2000倍)  (殺虫)

ダコニールフロアブル  1g1000倍)(ウドンコ病・クロホシ病)

展着剤         0.2g5000倍)

  ウドンコが発生したら、EFのダコニールに替えてルビゲン(水和剤)0.33gを追加します。またクロホシ病が発生したら、サプロール(乳剤)1gかラリー(乳剤)0.33g又はマネージ乳剤1gを使用します。ウドンコ病とクロホシ病が同時発生の時は、それぞれ一緒に入れてください。

  ハダニを見つけたら、コロマイト水和剤・ダニカット乳剤・オサダン水和剤・ダニトロンフロアブルを追加します。【倍率は説明書を見てください】

  上記の薬剤は、オサダン・ダニトロンを除いて殺卵・殺幼虫・殺成虫すべてに効きます。なるべく同一薬剤は、続けて使用しないでください。ハダニは同一薬剤を続けると耐性が出来易く、効かなくなるからです。

尚、展着剤に商品名は書いていませんが、5000倍のものは使いにくいので、ニーズとかアプローチBI、アビオンなどのもっと薄くして使用するものもありますので、これらを使っても結構です。

  乳剤が一種類でも入っている時はそれだけで十分なので、展着剤は入れないでください。展着剤が多過ぎるとかえって薬剤がつきにくくなります。

 

5.潅水

 ステムがどんどん伸びる時期なので、最も水を欲しがる時です。普通は雨がなければ、45日に1度ぐらい潅水するようになりますが、これも各々の庭の状態により、一概には言えません。水はけのよい乾燥地では回数が増え、逆に地下水位の高い所や、下が硬く水はけの悪い湿地では、水やりを控えた方がよいことになります。4月は雨量も案外多いので、実際に潅水する回数は思いの他少ないものです。私の庭のように水持ちのよい土地では、月23回の潅水で済んでいます。雨の多い年は、4月中1回だけの年もあったほどです。

 潅水のコツは、追肥とは逆に、与える時は十分与え、適当な間隔をあけることです。あまり小刻みに潅水すると、根張りが悪くなり弱い樹になってしまいます。やはり過保護はいけません。水を求めて根を伸ばすことも必要です。やや乾いたなと思ったら、1本当たり15リットルぐらい潅水しろといっても、バケツで量りながら潅水するわけではないので、時々水道の出水量を毎分何リットルか調べておくと便利です。毎分15リットル出るとすれば、60本潅水するのに丁度1時間でよいことになります。

 ここでちょっと水やりの量について考えてみましょう。1平方メートルで深さ2センチの容積は20リットルです。これだけの量は坪当たり約66リットル、坪6本植えなら1本当たり11リットルとなります。この潅水量で地表から何センチに水が行きわたるかは分かりませんが、切花業者の土耕栽培では1回の潅水量はこれくらいだそうです。土が保持している水はバラにはほとんど利用できず、土壌のすき間にある水を吸収しているので、見た目よりもバラが水を欲しがっていることが多いようです。1本当たり15リットルは経験から割り出した量ですが、おおむね合致しています。

 

6.新苗の植え付け

 霜の心配があまりなくなる4月は、新苗植え付けの適期となりますが、それもなるべく早く植えた方がよく、先行きの生長に差が出るようです。新苗の購入は、できるだけ直接バラ屋へ出向いて良苗を求めてください。スタートでつまずかないことが肝心です。

 尚、植え方については上記画像をご参照ください。

 

7.その他

 ○鉢植えの追肥

 地植えのバラは、あまり追肥を続けると開花時に肥料分が残り、すっきり咲きませんが、毎日のように潅水し、肥料分がどんどん抜ける鉢植えの場合は、蕾が色づくまで追肥をした方がよいようです。前月同様、月1回の置肥の他、週1回化成肥料の液肥10002000倍のもの、例えば千代田化成を10リットルの水に10g溶かしたとします。〔簡易式で10リットルの水に溶かす肥料の量×成分量(数字をそのまま掛ける)=ppm濃度となります〕この場合は1000倍液、濃度はN基準で15%×10g=150ppmとなります。これを潅水替わりに与えます。鉢植えの花を立派な力強い花に咲かせるには、肥切れを起こさせないことが大切です。液肥は100200ppmくらいが適正濃度のようです。500倍とか1000倍とかいっても肥料成分が違うので、百万分のいくつに当たるかを示すppm濃度で考える習慣をつけてください。

○フロリバンダやつるバラ、イングリッシュローズ・ミニバラなど

これらのバラは、たくさん花を付けさせて全体の美しさを楽しむものですが、

やはり混み合う枝やブラインド、出開きの芽は取り除いてやりましょう。風通しや日照をよくさせないと、病気になりやすいものです。特につるバラはほとんどすべての芽が伸び出しますが、出開きやブラインドが多いので、小まめに取り除いてください。

  開花日の予測

2番花や秋剪定のバラは剪定後の平均気温の積算温度が1000℃になると咲くと言われています。しかしこれは秋剪定には通用しますが、春の剪定には適応しません。剪定後しばらくはほとんど芽が伸びないからです。

 秋の剪定は、開花時期を予測して実施することが多く、彼岸頃着蕾すると、ほぼ1ヶ月後に開花すると思ってよいのですが、春は剪定の遅速による開花時期の差は、ほとんどありません。開花の予測は、桜の開花日が例年と比較して、早いか遅いかによってほぼ予想できますが、そのほかに秋と同様春においても、‘蕾がぽつんと見えて1ヶ月’で咲くようです。

 

文責・成田光雄